054612 ランダム
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太陽の香

太陽の香

最期1

私たちの選択は1でした。
母は心臓マッサージだけでもと
下の弟は人工呼吸器をつけて欲しいと
それが本音でした。
しかし現実は、
心臓マッサージをすれば肋骨の2・3本が折れるということ
人工呼吸器をつけると、機械で肺を動かすだけで回復は見込めず、家族も医師もはずせなくなること
患者本人も苦しいままだということ
もう、話はできないということ
これ以上苦しい思いはさせたくないという意見で一致しました。
そうなったときの延命治療は無し。。と。

そのときは意外にもその日のうちにやってきました。
父の呼吸は苦しく、医師から麻薬系の薬をつかう案が出されました。
医師はまず、父に聞きました。
父は苦しみながらも副作用を聞きました・
「意識がもうろうとします」医師は答えました。
「我慢します」父は苦しみの中でそう答えました。
そう、その薬をつかえば、もう話もできなくなることを家族は説明されていました。
この頃私は夫に電話をし、早退して帰ってきて欲しいと伝えました。
父は何度も母を捜し、母の声が聞こえると、消え入るような声で
「ありがとう」「ありがとう」と言いました。
母も父に聞こえるように大きな声で「ありがとう」と言っていました。
そばで見ていて辛い辛い光景でした。
夫も帰ってきて、娘を預けました。不安が伝わるのか3歳の娘もおじいちゃんの病室に入りたいとだだをこねはじめました。
眠ってしまった娘は夫の実家に、夫とともに行っていてもらいました。
2時間が経ち、父の苦しみは一層増しました。
もう一度医師が尋ねました。
「お薬つかいますか?」
父は「お願いします」と答えました。
我慢強い父も限界だったのでしょう。
家族も同意しました。
はじめは1ml、20分後に1mlだんだん苦しさがなくなるとはいえ、家族に見える父はまだ苦しそうでした。
そのうち、父の呼吸は楽になったようでした。
安心した私たちは急にお腹がすきました。午後9時30分でした。
下の弟はコンビニにお弁当を買いに行き、母は横になり、上の弟は一度シャワーを浴びに帰宅しようとしていました。
看護士の慌てた足音が病室に入ってきたのはその直後でした。
「○○さん!」肩を叩きながら父をゆする看護士に、私たち家族はやっと寝たのにまた起こすのか・・と思っていました。


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